記念日の動向:記念日文化レポート その3「都道府県の記念日から、地方創生を考える」

 

Okayama City Hall

2014年9月 12日、第一回「まち・ひと・しごと創生本部」の会合が引き金となり、地方都市間における地方創生競争が始まった。全国47都道府県は一斉に東京や他府県に向け、我が地方の魅力の喧伝を開始し、移住促進活動に躍起になっている。
「移住と定住」。その言葉を耳にするたびに感じるのは、地域の魅力が住民のあいだで共有されているかどうかが重要だということ。いくら行政が「我が県の魅力」を連呼したところで、インターネットを介しての口コミや評判はたちまちに日本全国に伝わる。
大事なことはそこに暮らす人々が、その郷土に誇りを感じているかどうか。地方創生の起点はそこにある。

地方創生を記念日の観点で論じるとき、各都道府県ごとに独自の記念日(県民の日など)を制定しているかどうかもその指標のひとつになるに違いない。
郷土の記念日を制定することは、人々の故郷への想いを醸成し、地域への愛を育むきっかけとなり、その土地の魅力を内外に発信できるからである。
そこで記念日文化研究所では47都道府県すべてのホームページを検索し、メールで質問書を送り回答を求めた。その結果、2015年3月28日時点で何らかの記念日を制定している都道府県は27都府県に及び、その率は全体の約57%に当たることが判明した。
中でも多いのが「都民の日」「県民の日」など、そこに暮らす人々(民)の日を冠した記念日で12都県で制定されている。
そして、その日付は廃藩置県により、現在の県域や県名などが確定した日に由来するものが多い。
また、その府県の自然景観や地理的特徴、歴史的なものを名称とした記念日も複数ある。
豊かな自然を想起させるのは滋賀県の「びわ湖の日(7月 1日)」、奈良県の「奈良県山の日・川の日(7月第3月曜日)、長野県の「信州 山の日(7月第 4日曜日)」、高知県の「こうち山の日(11月 11 日)」など。
歴史に根差したものには、長崎県の「県民祈りの日(8月 9日)」、沖縄県の「日本本土復帰記念日(5月 15日)」、大阪府の「万博記念公園ふれあいの日(3月15日)」、兵庫県の「ひょうご安全の日(1月 17日)」がある。
そして行政の施策の中から制定された記念日には愛知県の「愛知の発明の日(8月1日)」があるが、これは県の「知的財産を大切にする風土づくり・基盤づくり」を進めるためのものだ。
こうした「郷土の記念日」が広く知られることで「住民の誇り」と「地理的な認知」、「対外的なPR」が図れる。まだ制定していない県にはぜひ制定を呼び掛けたい。

2012年3月22日、政令都市の岡山県岡山市が市制施行日(1889年6月1日)である6月1日を「岡山市民の日」とした。
しかし、毎年の式典やイベントが行われているものの、いまひとつ市民への認知は進んでいない。それはなぜなのか。これからの記念日制定による地方都市の活性化を考えるひとつのヒントになればとの思いからその原因を考察してみる。
1・ 市民の賛同を相応に得る前に民意を伴わないトップダウンで制定された。
2・広報がポスター、チラシ等、高コストな紙媒体に偏っており伝播は限定的だった。
3・ブロガーイベントなど拡散力のある若者主体ではなく身内感が強かった。
4・毎回同じような式典(イベント)で市民を巻き込む魅力に乏しかった。
5・告知が行き届かない状況で敢行したため、選ばれた特定の人のための宴になった。

このような教訓をもとに全国の地方都市が記念日制定の効用を十分に活かすには以下のような方向性が大切であると考える。
1・自治体が記念日を制定する際、住民にその趣旨と効果を十分に説明する。
2・ソーシャルメディアの利活用に長けた発信力のある若者層を主役にする。
3・住民の理解を促し、郷土愛を醸すためのプレゼン・コンペなどへ積極的に投資する。
4・制定を予定する記念日を住民認知度調査などに基づき、条例などで正式に制定する。
5・記念式典やイベントは告知が行き届いた環境で、オープンに実施する。

地方創生が主要テーマのひとつとなった地方自治において、都道府県民の日、市民の日など、行政が制定する記念日の意義は増してゆく。年に一度、毎年必ずやってくる記念日のチカラは思いのほか大きいからだ。

すでに制定している自治体においては記念日をどのように住民に知らしめ、意味あるものにしていくか。また、新たな記念日の制定を検討する自治体においては、どのような記念日を制定すべきか。この調査と考察が何がしかのヒントになれば幸いである。
(写真は岡山市役所)
記念日文化研究所 上席客員研究員 菅野敦也